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第三章.顧客データの収集、分析および活用



1)顧客データの収集

(1)収集したいデータ項目

顧客感動マーケティングをデータベースを使って進める上で、まず必要なのは顧客データです。最低限、集めたい顧客データは下記の通り。

(a)漢字氏名
(b)仮名氏名
(c)電話番号
(d)携帯番号
(e)生年月日
(f)入会日
(g)性別
(h)職業
(i)住居形態
(j)来店手段
(k)購読新聞
(l)メールアドレス
(m)携帯メールアドレス
(2)入手の方法

入手方法は以下の通りです。

(a)カード発行時に入会申込書に記入
(b)カード満券時、利用時にカード裏面または入会申込書・アンケートに記入
(c)顧客ランクアップ時により詳細な属性データを入手(ブロンズ会員からゴールド会員d時にランクアップ時など)
(e)配達時に入手
(f)メールでの情報提供やメールマガジン申し込み時に入手
(g)WEB会員申し込み時に入手
(h)占いでユーザーの生年月日・血液型・性別等のデータの収集
(i)プレゼントイベントによるユーザーの住所地等の取得
(3)使えない顧客データ

実際に顧客データを集めてみると、なかなか使える顧客データが集まらないのが現実です、営業担当者や店舗、コールセンター、自社発行カードや各種のアンケートなど様々なチャンネルを通して企業は顧客データを入手しようとしますが、件数はそれなりの規模で集まっても、使えるデータにならないのが現状です。

その主な理由は以下の通りです。

(a)データベース化する体制やシステムになっていないため、毎日の作業に手が回らなく、気づいたときには未整理データが山積している。多くの企業で未だに「お客様がまず注目されるのは商品、価格、そして店舗づくりであって、店とのリレーションシップは優先順位で言えば一番後」と考える人が多いようです。
(b)顧客データを顧客への請求書発行、売掛金処理などの顧客管理システムとして、部門ごとに構築・収集したため、部門中心となっている。そのため、共通データベースにするには、データ項目がすべて埋まりません。さらに、重要な顧客の意見やクレームが統合管理どころか、部門内に隠されていたりします。
(c)初期登録時や契約時の情報が退職、結婚、出産といったライフステージの変化や趣味の変化といったデータの変更情報をメンテナンスする仕組みがないため、実態とずれている事が多い。
(d)クレジット決済機能の付いたカードでは、自分ではなく世帯主の名前で申し込む事が多いため、化粧品の購買頻度が多い顧客が男性だったりします。
(4)使えない顧客データを使える顧客データにする

マーケティングに役立つ顧客像を作るためのデータを集めるには下記の項目に注意します。

(a)むやみにデータ項目を増やすとデータの抜けが多くなり、精度が落ちるため、まず少ない項目で成果を上げ、それから何が足らないかを考えます。また記入されたデータが継続的にメンテナンスできるかどうかのチェックを忘れてはなりません。
(b)継続が難しいデータを集めるよりも、必要最低限に絞ったデータを確実に集めます。(家族構成で子供がいるかどうか、夫婦共稼ぎかどうかなどは、欲しいデータですが、顧客の側で変更が有った場合、きちんと更新される見込みがあるがどうかをよく考えた上で収集します。)
(c)顧客の来店頻度を増やす工夫をして顧客データを常に最新にする努力をします。
(d)記入しづらいデータは購買履歴から判断し、データへ求める精度を検討します。(専業主婦か兼業か。これはアンケートで記入して貰わなくても、来店する曜日や時間帯、良く購入する食材などのデータをカードで収集すれば、判断できます。また、女性に年齢は聞きにくいがズバリ何歳かを聞かなくても、5段階程度の年齢幅がわかれば良いでしょう。)
(e)部署別で必要となるデータ項目が異なるので、必要なデータ項目とメンテナンス体制を個別に考えます。(顧客に関する情報を入力しないと請求書が発行できない仕組みなど。)
(f)データの入力および更新プロセスを業務に組み込みます。組み込めない場合はアウトソーシングしてでも、データを信頼性の高い、正しい、新しいデータにします。
(g)メンテナンス率を高めるためには、情報を閲覧できるように携帯端末を使用するなどの工夫が必要です。

6)アウトソーシング会社の利用の可否

自社内でデータベースの構築とメンテナンスが難しいため、顧客データの収集・加工・分析・提言を一括で請け負うアウトソーシング会社が多数生まれ、業務の委託がされて来ました。

しかし、それらの中には分析が一般的でクライアント企業の特性を捉えたもので無いため、現実的に役立つものでなかったり、分析に時間を要したり、ランニングコストが高かったり、余り良い評価を聞かない事も多いようです。やはり、自社の「顧客の声」は自社で分析し、活用できる体制が重要です。

「お客様の声」を一生懸命聞こうと努力する会社は「システムが無い」「あるけど時間が無い」などの言い訳はしません。何とか自分たちで考え、工夫し、汗を流します。そういう姿勢は必ずお客様に何らかの形で伝わります。そうすると「お客様の声」が返って来るのです。

アウトソーシング会社の利用が悪いと行っているのではありません。アウトソーシング会社を利用する時には「自分たちはこうしたい」「こういうお客様の声を聞きたい」ということを積極的に伝えなくてはなりません。

<参考資料>

データ分析もPDCAのサイクルを回す。

1.必要データの収集

2.データの蓄積

3.データへのアクセス

4.データの加工・分析

5.データを有効な戦術情報への変換・仮説化

6.戦術の実施

7.戦術の評価

8.戦術の見直し → 1へ戻る

このサイクルを繰り返すことで、戦術がより的確になり、それが売上・収益になっていきます。この状態が「顧客の声」を聞いた結果なのです。どのプロセスも重要ですが、特に5~8がとても重要です。

5)データベースの構築

上記のような流れでデータを有効的に活用するために、目的別にデータを格納し、いつでも引き出せるようにデータベースを構築する必要があります。
しかし、中小企業においては、システム部はシステムのメンテナンスに追われて、それを構築する余裕が無いのが現状でしょう。何故なら、かつては売上・利益共に上がっていたので情報システムに投資をする必要がなく、今までの日常の作業をこなす体制を作っておけば良かったからです。

また、データを活用する部門(商品部、販促部など)においても、データを分析できる形に加工するまでに膨大な時間を費やして、本来の目的である分析とそれからの仮説づくりに十分な時間を割くことができません。

良く聞くのが「データ分析はすでにシステムに組み込んでいます。ただ、それを活用する暇が無いのです・・・」。

4)データベース・マーケティングの目的の理解

データベース・マーケティングを実現する上で「核」とも言える「データベースの構築」「データ分析」「データ活用」を具体的に進めている企業は大手企業やチェーン店以外では以外と少なく、まだまだ未発達な状態と言えます。

ポイントカードを発行する時に集めた顧客情報をリスト化した顧客リストをデータベースと呼び、そのリストを元にDMやバースデーカードを発送することがデータベース・マーケティングと勘違いしている例も多いようです。

(1)分析用語やシステムに惑わされず、本質を掴むことが重要

「データ分析」「データ活用」という言葉は大変曖昧です。データが介在する物はすべて、「データ分析に基づいた上で・・・・」「顧客購買データ分析の結果・・・」などを冒頭にビジネスレポートにまとめられていますが、実際には単なる検索や抽出結果、もしくは単純な集計であることがほとんどです。

最近データ活用ツールとして脚光を浴びているOLAP(オンラインで行う多次元分析)も、様々な集計結果をオンラインで表示する仕組みに過ぎません。

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言葉やシステムに踊らされず、データベース・マーケティングの目的を明確にし、「データ分析」「データ活用」に目を向けなければなりません。

(2)「顧客の声なき声」を捉え、具体化することが重要

データを分析し、活用するということは顧客と企業の購買プロセスの過程で発生する大量のデータの中に潜む「顧客の声なき声」を捉えるところからスタートします。その上で、その声から修正や対策といった具体化策を仮説的に導きだし、実行していきます。

顧客一人ひとりの事情に合わせて商品・サービスを提供するためには、「顧客の声なき声」を聞き、データベースから顧客の好みを顧客に代わって探索することからスタートします。

(3)データベース・マーケティングは「統合マーケティング」です。

「顧客の声なき声」を聞くためにはデータベース・マーケティングが6つの構成要素で成り立つ「統合マーケティング」であることを理解しなければなりません。

①顧客感動マーケティングのコンセプトの設計

②データベース構築

③データ分析

④マーケティング企画(PLAN)

⑤マーケティング実行(DO)

⑥マーケティング評価(SEE)

これらを実施することで、データベース・マーケティングを「顧客の声に耳を傾けるマーケティング」すなわち「双方向性に重点を置いたマーケティング」にすることができます。

3)データベース・マーケティングの注意点

データベース・マーケティング目的を達成するためには「データベースの構築」「データ分析」「データ活用」というプロセスを経ます。その際の注意点は以下の通りです。

①信頼性の高い、正しい、新しいデータを最低必要数以上収集すること。
※最低必要数以上収集することはなかなか難しいものです。全顧客の10%では全顧客の特性を把握したとは言えません。最も良いとされるのは全顧客の75%と言われています。

②市場から最新のデータを直接獲得すること。
※市販データや又聞き情報は情報の鮮度や信憑性に疑問が残ります。

③データは「集まる」物ではなく「集める」ものであること。
※自らが集める努力をすることで活用に一生懸命になれます。また、集める努力をすることでお客様が胸襟を開いてくれます。

④誰でも簡単にアクセスでき、比較的簡単にデータを加工分析して、有益な情報を獲得することができること。
※データ収集に時間やコストが掛かっては本末転倒です。集めたデータをマーケティング企画立案や実行展開する時に時間やコストを掛けるべきです。

2)データベース・マーケティングの目的

最初にデータベース・マーケティングの目的を整理してみます。

①顧客の固定化をはかる。

②データから顧客を捉える。

③データを基に顧客の購買行動を理解し、次の行動を予測する。「ニーズの先読み」と言います。
※顧客が今後「何を買うか」を予測する上で「過去に何を買ったか」を知ることが最も有効的です。顧客属性からわざわざ類推する必要はありません。また、顧客アンケートで安易に知ろうとする事も避けるべきです。

④情報に基づいて、現在のマーケティングを修正・変更する。
※顧客感動マーケティングを実践するという信念は変更してはなりません。しかし、手法はどんどん革新させるべきです。

⑤顧客が何百万人いても昔ながらのパーソナルな関係を作り、パーソナルなサービスの大量生産を可能にして、たくさんの方から顧客満足を得る。

⑥広告・販売促進・営業活動のコスト効率を上げる。

⑦在庫の持ち過ぎや機会ロスを無くす。

1)データベース・マーケティングの必要性

顧客を集団として捉えるのではなく、おひとりお一人に注目した上で自社顧客の特性を知り、自社の強みと弱み、更に変動する市場動向を深く考察し、競合他社との生存競争に勝ち残るためには、データに基づいた正確で迅速な意志決定が必要です。その意志決定を強力に支援するのがデータベース・マーケティングです。

トータルリライアンス(お客様からの依存度)を高め、ライフタイムバリュー(生涯価値)を最大にする具体的手法について(その5)

(8)顧客感動マーケティング導入にあたり注意すべき点

特に次の点に注意すべきです。
企業もしくは店舗とお客様の関係をより良く、より長く構築するためのキーワードはひとつです。それは「お客様のお悩みや困り事」を解決してあげることです。

売上や粗利に悩む企業や店舗の問題ではなく、お客様の抱えていらっしゃる問題を解決するための手段や仕組みとして、FSPが導入されるべきなのです。

企業や店舗の問題解決のためにお客様を利用するような精神では短命となります。何かあったら企業や店舗の都合が優先され「建前」の「お客様志向」ではなく、本音で「お客様至上主義」を貫くことが大切です。

お客様至上主義とは下記のような思考を言います。

お客様の思考=企業の思考
お客様が必要としているものの提供=企業が作ったものの提供
お客様の尺度での評価=企業の尺度での評価

左辺がお客様で右辺が企業でなければなりません。
決して、企業を左辺に持って行ってはなりません。

トータルリライアンス(お客様からの依存度)を高め、ライフタイムバリュー(生涯価値)を最大にする具体的手法について(その4)

(6)FSPとポイントカードシステムは車の両輪のようなもの。

顧客感動マーケティングを展開しようとした場合、お客様の利用状況を把握する仕組みが必要です。最もポピュラーな手段がポイントカードシステムでしょう。スタンプを押すアナログ方式、レジと非連動ですがポイントがカードに印字される仕組み、レジと連動してポイント発行以外に、SKU(単品レベル)で購入履歴を構築する仕組みなどがあります。

最近はカードシステム以外に携帯電話を使った、ポイントシステムも出来ています。

仕組みはデジタルである必要はありませんが、情報を集めやすく、また加工もしやすいデジタル方式の方が良いと思います。


(7)顧客感動マーケティングがうまく行かない理由について。


多くのスーパーマーケットで、週次販促セールを販売促進の柱として実施しています。毎日のように新聞折り込みチラシを商圏内に広く配り、目玉商品を大量陳列し、消費者が多数来店することを最も重視していました。この手法は非常にシンプルな方法で、多くの企業で採用され、1970年代には最もポピュラーな販売促進方法でした。あくまでも価格がポイントであり、大量仕入が可能で資本力のある大手が有利であり、個人店や商店街が太刀打ちできなくなり、最近の商店街のシャッター通り化に繋がる大きな要因と言えます。

また、目玉商品ばかりを購入するお客様(バーテンハンターやチェリーピッカーと呼ばれます)が最も得をする事になり、多頻度利用の優良顧客様に利益還元できていない事が指摘されています。

景気が悪くなり、費用対効果の見直しが叫ばれてきました。

そこで、誰が自店の最も優良なお客様であるのか、いかにしたらバーゲンハンターを排除することができるのか?自店でも競合店でも買物をする浮遊客(スプリットショッピング客と呼ばれます)に、どう自店への関心と購買(ストアロイヤリティと言います)を高めるか?また、不要な販促経費を削減し、良いお客様にはきちんと利益還元し、ストアロイヤリティを高めるか?その結果として、全体としての利益性をいかに高めるか?と言った経営上の課題を解決する必要に迫られ、仕組みとして FSP(フリークエントショッパープログラム)であり、これを採用する企業が増えたのです。

米国のドロシー・レーン・マーケットは25万ドルを使っていたチラシ経費の全てをFSPに振り向けました。ドロシーのプログラムはクラブDLMと名付けられ、1995年5月31日より実施されました。カードにはバーコードが印刷され、カード会員が買物をする毎に読み取られます。これによって、お客様がどこに住み、いつ、何を買ったのかがわかる仕組みが出来上がり、今まではバーゲンハンターを含めた全てのお客様が購入できた目玉商品はクラブDLM会員しか購入できなくなったのです。蓄積されたデータベースは、誰が優良顧客なのかを購買履歴から分析し、更に優良顧客の中から個別に購買頻度の高い商品をリストアップして、推奨することができます。そこで、顧客一人ひとりのニーズに応じたメーカーとタイアップしたクーポンをDMで個別に発送しました。これにより粗利率を2年間で2%向上させることができたのです。

米国での顧客感動マーケティングの成功事例を聞き、日本でも実施した企業が多くありますが、成功事例は少ないです。失敗の要因は・・・

①マス・マーケティングと顧客感動マーケティングの違いが理解されていない
②一枚でも多くのカードを発行すること目的となり、カードの利用推進や購入履歴の分析が後回しになっている。
③カード発行=顧客データベースの構築が出発点となっており、FSPや顧客感動マーケティングを仕組みとして組み込まれていない
④優良顧客創造の視点よりも、単なる対競合対策としての視点が優先されているケースが多い
⑤単なる「還元」としてディスカウント的要素の高い手段として、カードが用いられているケースが多い
⑥目的と成果指標が曖昧で、効果が測定できない
⑦顧客感動マーケティングの基本概念である、「顧客すべてが神様ではない」というコンセプトが理解できず、バーゲンハンターも将来の優良顧客のように見てしまう。
⑧かつての販促の優等生である「チラシ神話」を未だに信じている。

トータルリライアンス(お客様からの依存度)を高め、ライフタイムバリュー(生涯価値)を最大にする具体的手法について(その3)

(5)顧客感動マーケティングに必要な「仕組み」について

顧客感動マーケティングではたくさんお買上戴いたお客様、もしくは高頻度にご利用戴いているお客様から順にコストを掛けるべき、というお話しをさせていただきました。それがお客様を公平に扱うことになるからです。

コストを掛けるとは言い換えると「特別扱い」するということです。このことをフリークェンシープログラム(以下FSP)と言います。日本語で書くと「高頻度にご利用戴くお客様に向けたサービス」となります。間単に言うと「たくさん買ってくれたから、おまけしますよ!」と言うことで、「たくさん買ってくれたら、おまけしますよ!」とは違います。

1997年と少し古い話ですが、米国の食品小売業が「競合への対応」をどう行っているかをFMI(Food Marketing Institute)が調査しました。

①80%強が「生鮮の品揃え強化」を上げています。
②70%強が「個店の品揃え尾をそれぞれの商圏に適合させている」としています。
③ほぼ70%が「惣菜の品揃えの追加」を上げています。
④70%弱が「プライベートブランドの品揃えの更なる強化」
⑤65%が「主要顧客層に焦点を当てる」
⑥45%弱が「FSPの導入」を上げています。

米国食品小売業のFSPの導入の狙いは

①顧客ロイヤリティを高める
②顧客情報の入手
③優良顧客の売上増
④店舗イメージの向上
⑤市場シェアの改善(競合に対して、マーケットポジションの確保と維持)
⑥広告宣伝費の削減

でした。ある企業の具体的な導入事例です。

①累計ご利用金額により、5%から20%の範囲内で4段階の割引サービスを行った
②新規メンバーへの利用促進インセンティブ
③メンバー指定の学校や教会へ売上高の1%を寄付した。
④25,000枚のカードを発行し、その内52%のお客様がアクティブ客(反対は休眠客)であった
⑤売上の85%および購入履歴の70%以上をFSPシステムで把握することができた。

米国食品小売業での導入効果は

①売上増(88%)
②取引量の増加(78%)
③顧客数増加(68%)
④広告及びマーケティングコストの削減(44%)

このように大きな効果を上げています。